帰る場所

清×野






「やっと、ですね」
「今日まで大変でしたものね清四郎」
「いえ、そうではなくて…やっと夫婦になれるな、と。同じ家に帰れるのが嬉しいんです」
ひたと見つめる大きな黒い瞳に映る自分の姿を見つけて、ふと笑みが漏れた。朱を差した唇が僕の名前を呼ぶ。
「清四郎、違いますわ」
「違う?」
「ええ。帰る場所はここです」
グローブの白い指が僕の胸元を伝い、左胸に掌があてられた。
「私は清四郎のもとへ。清四郎は私のもとへ。互いが互いの帰る場所ですのよ。たとえ顔を見れない日があったとしても、私は清四郎のここへ帰っていますわ。覚えていて下さいな」
じわりと沁みてくる体温と、野梨子の言葉にうっかり涙腺が緩みかける。
「いやですわ泣かないで清四郎」
「泣かせるようなこと言わないで下さいよ」
フンと鼻を鳴らしてやり過ごせば、僕らはいつもの僕らになる。
「ところで野梨子、僕も帰る場所を確認してもいいですか?」
「い、いやですわ」
「どうして?」
「今はとにかく駄目です大きな声を出しますわよ!」
「それは…困りますね」
くっくと笑いだせば、屈託なく笑う美しいあなたがいて。
この日のことを、僕は一生忘れることなどないだろう。僕の、帰る場所。


***axicoさまよりいただきました。***


(2018.11.27 追記)


15周年企画でリクエストいただいた清×野でウエディングです。
清野と言うと和装のイメージがありますが、リクエストの雰囲気から洋装なのでは?
と思いお伺いしたら、やはり洋装でとのことでしたので、洋装ウエディングですー。
本当は可憐や悠理をブライズメイトとして描けたら…という追加のお話もあったのですが、
ごめんなさい、ちょっと難しかったので、こちらは別途機会があれば描いてみようかと思ってます。

そういえば、カプもので結婚式を描いたのは初めてですよね。単体では描いたことありますが。
ドレス野梨子描くのとても楽しかったです!
リクエストしていただいたルナさん、ありがとうございました!


(2018.11.16)



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