瞬きするのも惜しいほど

清×野






清野と藤の花は合いますなあ。

(2016.05.16)



***追記:axicoさまより**



「ねぇ清四郎、今年もよく咲きましたでしょ?」
「そうですね、毎年見事なものだと目を見張りますが、今年は特に美しく映ります」
きゅ、と手を握る清四郎を意に介さず、風が揺らす紫の花々に運ばれる香へ、野梨子の意識は注がれる。

「良かった、一緒に見ることができて…」
そう、貴女がそう呟くのも実は毎年のことなんですがね。
それでもこれまでとは決定的に違うのが、この手に収められた温もりだ。
偶然を装うでもなく、ぎこちなく結ぶでもなく、ここにあるのが自然だと分かりきっている━━この季節に藤の花が開くのが当たり前なように、 僕達はお互いの温度に馴染んでいる。

「清四郎、ほら花が舞いますわ」
「ええ」
「…見てないくせに」
野梨子の人差し指がなじるように、僕の人差し指の付け根を撫でる。
「野梨子の表情を見てれば、分かりますよ。
 むしろ見飽きない花を僕は生まれてこの方、ずっと見続けてる気分ですがね。」
「もう、そんなことばかり言って」
軽く爪を立てられたところで、ちくりともしない。
まぁ一応ポーズとして、顔を前に向けておきますか。

「来年も、一緒に見ましょうね」
僕の隣で、花が笑う。



(2016.06.03)





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